奥会津の“神の隠れ湯”西山温泉 – その1

の3人は、年に数回、山形県に行かなくてはならないヘボ用があって、東京と米沢との間を往復します。主にクルマを利用するのですが、急がなければならない場合は最短時間となる東北自動車道の高速を利用しますが、そうでなく時間的に余裕がある時は、敢えて遠回りのルートにしたり、ローカル色たっぷりな一般道を選ぶようにしています。

その道すがら、あまり行く機会がなかった観光スポットや、鄙びた昔ながらの温泉、評判のお店だが辺鄙でなかなか足を向けることができなかった美味しい食べ物処など、これまで気になっていたスポットに立ち寄れるよう工夫しルーティングするようにしています。
「あそこにも行きたい、ここは欠かせない」などと欲張っていくと、その日のうちに米沢に到達するのが難しくなって、そういう場合は、「途中で1、2泊しようか」ということも度々です。ルート選びは、検討すればいろいろおもしろい案があるもので、今度はどんな行程で米沢に行こうか、ということが毎回の楽しみになっています。

今回は、そのようなルート開拓の一つとして、日光から奥会津を経由し、喜多方を拔けて大峠を超え米沢市に至る、1泊2日のドライブ旅を企画・実行してみました。
日光では久々となる世界遺産東照宮をたっぷり観光し、花見スポットとして有名な奥会津の柳津町・円蔵寺の境内桜や、喜多方市・旧日中線しだれ桜街道を散策します。各日のお昼ご飯は、前々から一度は行ってみたいと思っていた日光郊外の隠れ家蕎麦屋と会津・山都町の有名蕎麦屋の2軒を訪れます。そして、宿泊地として奥会津・西山温泉郷を選んで、つげ義春も昔泊まったという「中の湯」に一泊、翌日は「老沢温泉」にも立寄り湯するという、またまた欲張りで盛りだくさんのドライブ・プランとしました。

南東北地方は、ちょうど桜が見頃の時期とも重なり、本当に、「見どころいっぱい、美しく、おいしく、癒やされた旅」となりました。
どうぞ、御覧ください。

今回の行程

2018/4/20~4/21・1泊2日

2018/4/20(金)1日目 東京~奥会津

09:00自宅スタート東北道/日光宇都宮道路経由11:15日光の蕎麦屋『小来川 山帰来』 12:30日光東照宮16:15会津西山温泉 旅館 中の湯着

09:00
日光~会津の春の桜と温泉を巡るドライブ旅、いよいよ出発です。
今回も+の3人旅です。
クルマは首都高を通り、東北道へ向かいます。

日光ICで有料道路をおり、日光市の小来川地区へ向かいます。日光の街から結構距離もあり、人里離れた田舎です。
そこにポツンと一軒の蕎麦屋があり、そこでお昼ごはんにします。前々から、このお蕎麦屋さんの存在を知っていましたが、訪れるのは今回が初めて。どんなところか、ワクワク、楽しみです。

『小来川・山帰来』手打ちそば

ウワァァァー、なんて美しい建物でしょうか。
この山間の小さな集落に、突然に見えてくる赤暖簾!
正倉院を思わせる軸組み木造平屋建て一軒家、シンプルで和風な趣です。
ここがお蕎麦屋の入口か?、と疑う佇まいです。

石の階段を3段上がって、大きな両扉の板戸を引いて中に入ります。店内に一歩入ると、玄関脇に煙突のついた大きな薪ストーブ、そして、吹き抜け空間には、木組みの柱と梁、真っ白な塗り壁が目に飛び込んできます。パッーっと明るい店内です。

室内は、白い壁と木の柱のコントラストが美しく、大きなガラス張りの窓は天井まで続きます。足元は、焦げ茶色の天然木無垢・幅広の床が拡がり、客席は、あのハンス・J・ウェグナーの椅子をはじめ明るいトーンの北欧家具で設えています。室内空間は、建築素材的にも色彩的にも、その対比美を意識したなかなかのセンスです。
ガラス張り越しには、緑いっぱいの裏山が拡がり、自然を取り入れた広いお庭も気持ちよさそうです。


ガラス越しの庭


おしながきと箸入れ

オーダーは、「もりそば十割・山帰来」、「もりそば二八・小来川」、「ゆばと季節の野菜の天ぷら」としてみました。蕎麦は盛り付け方がこんもり適量で、口に入れると喉越しがよく、茹で加減もちょうど良い加減です。
天ぷらは、お店が里山エリアにあるので山菜がふんだんに付くのかなぁと思っていましたが、これといった山菜がないのが少し残念。今はまだ山菜シーズンが始まっていないのかな。でも、美味しくいただきましたよ。

最後に、蕎麦湯が一人づつ器に入って出されました。この形がいいですネ。
食事中、店内には素敵なジャズが静かに流れ、木のぬくもりを感じつつゆったりと優雅なひとときを過ごすことができました。

インパクトのある立地と粋で個性的な建物、センスよく心地よいお店の雰囲気、期待に違わぬ美味しいお蕎麦、・・・・とても充実のお昼ご飯となりました。ごちそうさまでした。

ここは同じ敷地にある別棟のそば打ち小屋です。窓越しに蕎麦を打つ様子が見れるようになっています。
そして小屋の前には、サイクリストのための自転車置き場が用意されていました。
この日光周辺は、毎年「ツールド日光」が開催されるなど自転車好きが多く集まるところらしく、自転車で来るお客さんには嬉しい配慮ですネ。


お店の外のテラス


木の軸組みと白壁の外観


そば打ち小屋の外壁


瓦を埋め込んだ外回り


広い駐車場とお店へのアプローチ

今回の訪問があまりに印象的だったので、旅から帰ってから改めてお店のHPをチェックしました。店の由来や蕎麦、ログハウスなど「こだわり」の解説がありましたので下に再掲・紹介しておきます。ご興味のある方、どうぞ。

日光市小来川へお越しの際は自家栽培・自家製粉 手打ちそばの山帰来へ是非お立ち寄り下さい。

さて、お腹も膨れたし、次は・・・

日光東照宮

1999年12月にユネスコ世界遺産委員会で文化遺産として登録されました。登録名は「日光の社寺」です。
ここ日光東照宮には世界遺産登録になるはるか昔、30年ほど前に訪れていますが、世界遺産登録後「平成の大修理」後の美しく維持修理された東照宮を、改めてゆっくりと見てみたいと思います。

東照宮の駐車場は何ケ所かありますが、まずは目指すは一番近い「東照宮大駐車場」です。
満車に近い状態でしたが、なんとか空きスペースを確保できました。ラッキー!

案内に従って進むと・・・参道の横に出てきました。広くって立派な参道には、やはり大勢の観光客がいますネ。

石鳥居(いしどりい)/重文
最初に石鳥居をくぐります。

次に左手に見えてくるのは・・・

五重塔(ごじゅうのとう)/重文
修復後の色鮮やかな姿に蘇った五重塔です。
拝観で塔の回りを一周すると、

うわぁ~、近くから間近に見ると、塔の重心柱が見えますよ。また、耐震などの修理の際の細部に渡った画像などのいろんな解説板がありました。とてもわかり易く解説してあり、助かります。

表門(おもてもん)/重文

神厩舎・三猿(しんきゅうしゃ・さんざる)/重文
ここはご神馬をつなぐ厩、昔から猿が馬を守るとされています。
厩舎上部には、色鮮やかに修復されたお猿さんの彫刻を見ることができます。
上の写真が、かの有名な「見ざる・言わざる・聞かざる」三猿です。

三神庫(さんじんこ)/重文

陽明門(ようめいもん)/国宝
日本を代表する最も美しい門と言われ、素晴らしい匠の技が圧巻です。本当に見飽きることがないので「日暮の門」と呼ばれていることが実感できます。故事逸話や遊び、聖人賢人など500以上の緻密な彫刻がほどこされているとのこと。修復でさらに美しく蘇りましたネ。

次は、いよいよ・・

眠り猫(ねむりねこ)/国宝
東回廊の出入り口にある、日光東照宮の彫刻の中の「眠り猫」は、三猿と並んで有名な彫刻です。眠り猫は国宝の指定も受けている優れた彫刻です。江戸時代に実在したといわれている伝説の彫刻家「左 甚五郎(ひだり じんごろう)」の作とされています。
おお、いまにも動き出しそうぅ!

ちなみに眠り猫の真裏には雀の彫刻がありました。

廻廊(かいろう)/国宝
陽明門の左右にの外壁には我が国最大級の花鳥の彫刻が飾られています。いずれも一枚板の透かし彫り、極彩色がほどこされています。凄い!

唐門(からもん)/国宝}
陽明門をくぐると目の前に見えてくるのは、胡粉(貝殻などから作られる白い顔料)で白・黒・金などに塗られた強烈で麗しく豪華すぎる唐門です。この門からは、その当時は高い身分の者のみが使用できたエリアです。

唐門の奥には御本社があります。
御本社は左側の祈祷殿から入って靴を脱いで中を拝観できますが、写真撮影はNG。拝殿に進むと巫女さんが御本社にまつわる話を滔々としています。途中から聞いても、説明が一通り終わる、みんな入れ替え制になるようです。

奥宮(おくみや)/重文
奥宮に続く通路ですが、その先に階段は全部で207段と聞いているので、奥宮まで行くのは少々迷いましたが断念です。

本地堂(薬師堂)「鳴き龍」
本地堂(薬師堂)の天井は檜板を34枚はめ込んだ「鏡天井」があり、そこに狩野永真が描いた縦6m、横15mの巨大な水墨画風の龍の絵、これが「薬師堂の鳴き龍」と呼ばれています。

鳴き龍」と呼ばれる所以は、龍の顔の下で拍子を打つとカーンと音が鳴った後に音が共鳴して、鈴を転がしているような龍の鳴き声に聞こえるため、「鳴き龍」・「鈴鳴龍」と言われているようです。実際、本地堂(薬師堂)の坊さんがこのからくりを説明しながら、龍の顔下あたりで拍子木をカーンと打ち、少し後を追うようにリンリンと聞こえました。
やっぱりここも必見ですよね。

今回はたっぷり時間をかけ、しっかりと拝観させていただきました。
平成の大修理で国宝8棟、重要文化財34棟などが昔のような豪華絢爛な姿に戻り、また、見るモノが分かりやすく鑑賞できるようになって、修理の素晴らしい技術を体験することができました。久しぶりに来てよかったー!!

武徳殿の前を通って駐車場に戻ります。
鮮やかな朱色の外観の武徳殿は現在、東照宮道場生の稽古や東照宮流鏑馬の木馬稽古の他、社会人から少年まで多くの団体の合宿や稽古会などにも使用されています。

さて東照宮観光を終え、どこか甘味処で一休みしたいところですが、観光客でどのお店も混んでいて待たないと入れません。あまり時間の余裕がないので、せめておやつ用に何か甘いものでも買っていきましょう。

日光 湯沢屋のまんじゅう/お菓子

これが豆乳水羊羹『鉢石』です。上質な搾り立ての豆乳をたっぷり使用し、高級岐阜寒天で口どけよく固めた豆乳の水羊羹の上に、湯沢屋特製の小豆の水羊羹を流し、見た目にも美しく二層に仕上げたお菓子。要冷蔵で製造日より3日間。
今晩泊まる温泉旅館で食べるおやつ用に3個買いました。
それとこのお店の「元祖酒饅頭」を一箱、お土産用に購入しました。

さて、ここから奥会津にある今日宿泊予定の宿までは結構な距離。2時間以上の行程となり、夕刻までには到着しなければなりません。余りゆっくりもしていられませんが、途中、会津地方の緑いっぱい、花いっぱいの景色を楽しみつつ、田舎道の快適ドライブを続けることにしましょう。

会津・西山温泉郷「中の湯」

中の湯には午後4時過ぎに到着しました。
奥会津エリアはちょうど春真っ盛りの時期で、宿の前庭には桜や水仙が咲いています。

会津西山温泉は、只見川の支流・滝谷川沿いの山間の温泉郷です。たくさんの温泉と豊富な湯量が自慢で、8つある源泉すべてに入浴すれば万病も治るという言い伝えもあります。その歴史は、古事記の時代まで遡り「神の湯」とも呼ばれる古からの秘湯の里です。
湯宿はそれぞれ違う源泉を持ち、その効能もさまざまで、湯殿の趣も異なるため秘湯の風情を十分に楽しめます。<HPより>

そして本日宿泊する旅館「中の湯」は、創業明治21年の宿です。渓流沿いの自家源泉「中の湯」「杉の湯」「荒湯」の3種類の良質な源泉と地元の山からとれた旬の山菜や渓谷の恵みの川魚など奥会津の四季を感じられるお料理が自慢の宿です。

この「旅館・中の湯」は、漫画家のつげ義春が逗留した宿としても知られていて、今も漫画ファンがよく訪れるとのこと。実は、もつげ義春の大ファンで、ココに来るのを楽しみにしていました。
つげ義春が宿泊したのは本館で、彼の描いた本館の絵は次のようなものでした。昔ながらの湯宿といった感じで、なかなかムードがありますね。現在、この本館は改装され宿を経営しているご一家が住まわれていますが、今もその名残が見られます。

つげ義春が訪れた当時の中の湯
[つげ義春が宿泊した昔の中の湯・本館]

[現在の中の湯・本館(旅館としては利用されていない)]

中の湯は、温泉通にもよく知られた存在で、温泉チャンピオンで温泉評論家として有名な郡司さんもここを訪れていますね。

宿泊棟は旧本館の右隣の建物となり、お部屋は昭和時代の普通の和風です。温泉は旧本館の左隣の独立した別棟建物内にあり、大きな内湯と露天風呂が貸し切りで楽しめます。

思ったよりも到着が遅くなったので、さっそく別棟の温泉に向かいましょう。

自家源泉「中の湯」

「中の湯」は宿の名前にもなっている自慢の温泉で、そのために建てられた湯屋です。
木をふんだんに用いた立派な湯屋ですね。広い玄関と脱衣所、10人以上有に入れる立派でど~ンとした檜風呂が鎮座しています。壁側には洗い場、反対側は大きく開いたガラス張りで、明るく開放的です。
こんな素敵なお風呂を貸し切りで独占できるなんて、最高!!檜風呂の木のぬくもりと温泉のやんわりした肌触りの湯で、心地よく満喫です。

自家源泉「荒湯」

中の湯の外には、露天風呂の「荒湯」が続いています。
大きな石や小さな石を組み合わせた岩風呂で、山の芽吹いた春の匂いや風なども一緒に感じられて、自然の恵みを体感できる露天風呂です。

檜風呂の縁には彫刻された「小槌」が美しく、遊びココロがありますネ。
脱衣所も清潔で気持ち良い!

お風呂上がり、中の湯・湯屋からお部屋に戻る途中の外の景色、川面が気持ちいい!

温泉の後は、渓谷のキレイな川の流れで佇んでしばしうっとり。
桜もちょうどほぼ満開状態、お見事!

・・・・

夕食の時間になりました。一人ひとり、畳にお膳で用意されます。

一の膳 こごみの胡麻和え/あさつきの酢味噌

一の膳 山菜の煮物/焼き川魚

一の膳 鯉の甘露煮、一の膳 山菜の天ぷら
この他に煮物などが付いた、旬の山菜や地元の野菜や川魚を取り入れた素朴で飾らないメニューでした。〆のごはんも美味しくいただきました。

・・
夕食の後も、中の湯と荒湯を楽しみました。この日は私達の他に宿泊客はいなかったようなので、お風呂は好きなときに貸し切りで入り放題。
漆黒の夜空に輝く星を見ながら露天風呂も最高、そして中の湯でしっかり温まりました。

部屋に戻って、またまた缶ビールでカンパイ!!
その後はぐっすりと・・・

(ところが、この時期はカメムシが発生するようで、部屋の中にも入ってきて、どこから来るのか???ちょっとびっくり、驚きました。まあ、田舎だから仕方ないか、でも、カメムシはやっぱり苦手。)

奥会津の“神の隠れ湯”西山温泉 – その2
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